なぜ建設業許可が必要か
まず、建設業許可はどんな場合に必要なのでしょうか。
一つは、金額の大きな仕事をする場合に必要です。
以下、秋田県の建設業許可申請マニュアルから抜粋します。
許可を受けなくてもできる工事(軽微な工事)
建築一式工事以外の建設工事の場合・・・工事一件の請負代金が500万円未満の工事(消費税・地方消費税を含む)
建築一式工事の場合・・・@一件の請負代金が1500万円未満の工事
A請負代金の金額に関わらず木造住宅(主要構造部が木造で延べ床面積の2分の1以上を居住に供するもの)で延べ面積が150平米未満の工事
※建築一式工事とは、総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事です。例えば、一棟の住宅建設等一式工事として請負うもの、建築確認を必要とする増改築など。
これらの範囲内でずっと請け負っていくのであれば、わざわざ手間とお金をかけて建設業許可を取得する必要性はあまり感じないかもしれませんが
逆に言うと、上記の工事のみを請け負う場合を除いて全て許可の対象となり、28種の建設業の種類ごとに国土交通大臣または都道府県知事の許可を受けなければなりません。
ですから、建設業者が建設業許可を取得することは義務ではないので、許可が必要という業者のみが取れば良いことです。
にもかかわらず現在国内で建設業を営む建設業者の多くがわざわざ建設業許可を取得するのはなぜなのでしょうか?
一つには、無許可で行うことで、懲役刑、罰金刑という刑事処分が科せられたり、監督処分の対象という行政処分も科せられるからです。
ただ、デメリットだけではなく、受注金額の高い案件を受け持つことができたり、信頼度が増すなどのメリットも多くあります。ビジネスをより大きくさせるのであれば、取得しておいた方が良いでしょう。
許可を取ることで多くのメリットが生まれます。
建設業者のほとんどは建設業許可を取得して、事業を行っています。必須ではない建設業許可ですが、それでも取得することでには多くのメリットが生まれます。
その大きな要因の一つとして建設業許可を取得していることで得られる信頼性です。
大手建設業者は下請け業者を探す際に、建設業許可を取得していることを条件としていることが多くあります。
なぜならば、一般のお客様から受注を受ける際でもしっかりとした建設業許可を取得している業者であることを条件に発注している例もあり、
建設業許可を受けていない業者は敬遠されがちなのです。
それ故に、下請け業者としても元請け建設業者から仕事を安定して発注してもらえるように、建設業許可を取得しておくことがあります。
元請けの建設業者としても、信頼できる下請け業者が良いですから、建設業許可を取っておくことが、信頼できる、できないの一つの尺度になります。
逆に名刺に建設業許可番号がないだけで不信感を感じる業界人も少なくないと聞きます。
公共工事の入札も可能
建設業許可を取得しておくことで、建設業者は公共工事の入札も可能になります。
一般的な工事では500万円未満の請負代金であれば建設業許可は必要ありませんが、
公共工事の場合は500万円未満の請負代金であったとしても、建設業許可を取得しておかねばなりません。
公共工事を受注するには結構面倒な手続きが必要ですが、それ以上に民間の案件を請け負うよりも多くのメリットがあります。
たとえば、通常の民間工事の場合では工事代金は分割して支払われ、施工が完了した後にようやく全額の入金となるのですが、残念ながら請求書を送付しても、必ずしも入金してくれるとは限らず、不安定な部分があります。しかし、公共工事の場合はそういったリスクはなく、現金で支払われる上に貸し倒れがないので経営的にも安定します。
また、(最近はそうでもないのですが)一般的に不況下においても安定した受注を得られますので、経営者からしたらありがたいことです。
それに加えて公共工事を請け負うことで社会的信頼を得ることができますので、元請け業者や民間の施主、取引先からの評価もガラッと変わります。
融資も得られやすい
建設業に限ったことではありませんが、「事業を行うということはどれだけの資金を蓄えているか」というのは、とても大事なテーマです。
資金というのは現在手持ちの資金というよりは融資も含めた資金で、信頼を集め、融資枠をたくさん持っているかどうかも大切なことです。
建設業を行っていると、元請けとなる建設業者からも色々と良い仕事を斡旋してもらうこともあるでしょう。
しかし、借り入れができるお金も含めて資金がなければ、せっかくの仕事も稼働させることができません。
つまり、自己資金だけでなく、これからどんどん仕事を請け負っていくためには資金をどれだけ調達できるかが重要です。
建設業の場合は融資を受ける為には建設業者許可を取得しておくと融資を受けやすくなります。
たとえば中小零細企業に対して借りやすいと言われる国民生活金融公庫に新創業融資制度というものがありますが、こちらは融資を受けるにあたって、自己資金要件があります。これは自己資金がなければ融資が受けづらいものなのですが、建設業許可を取っていることで最低500万円以上の財産的基礎を持っていることが証明されます。
それによって融資を受けることができる可能性が格段に上がりますので、事業を発展させようと思った際には建設業許可は取得しておいた方が良いでしょう。